大昔の世界卓球選手権は、ずっと欧米の選手がタイトルを獲得していました。
そこへ敗戦からの復興と時を同じくして、突如日本が輝かしい成績を収め始めました。
シェークハンドの欧米選手を打ち破る、角型日本式ペンホルダー。
無敵の卓球王国時代が続くのかと思われたのもつかの間、強敵が現れました。
そうです中国です。
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用具と戦術の概要
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当時、猛威を振るったのが中国式前陣速攻のスタイルでした。
寸詰まりのシェークハンドラケットのような中国式ペンホルダー。
その可愛らしい形のラケットに表面がツブツブの表ソフトラバーを貼り、卓球台からあまり離れず速いテンポで打ち込む戦法です。
私は小学生の頃、児童館で卓球をしていました。
シェークと日本式ペンの2種類があることは知っていて、ラバーは表面が平らな裏ソフトラバーしか見たことがありませんでした。
ある日、卓球の解説本を見て驚きました。
そこには伝統的な中国式前陣速攻の説明がありました。
風変わりなラケットに、同じく風変わりなラバー。
ページをめくると、他にも見慣れない内容が続きます。
ラケットはペンホルダーの握りなのですが、「わしづかみグリップ」といって、人差し指を親指から離してガバっと握っています。
サーブの連続写真はトスをこれでもかというぐらい高く投げ上げ、近所の児童館だと天井に当たってしまいます。
まるで、アマゾンの奥地に住む珍獣の存在を知ったような気分でした。
中国は、1966-1967年の文化大革命という政治的な理由による大会不参加時期があありました。
また1979年の団体戦は、ハンガリーチーム男子に完全攻略されてしまいました。
それでも1950年代後半から1980年代までの約30年間、この戦法が主流となっていました。
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当時の状況、そして詳細
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ペンの表ソフトで、片面のみにラバーを貼っていたため、現在のような裏面打法という技はありませんでした。
荘則棟(ツァン・ヅートン)選手のように自在にバックハンドを振る選手もいましたが、多くはショートやプッシュを使い、このスタイルは右打ち左押し(右利きの選手の場合)と呼ばれていました。
ネット上にいろいろな動画があり、当時のプレーを見ることができます。
全てのサーブがトスを高く投げる上げるのではなく、バリエーションの 1つとして使う選手が多いようです。
映像を見ていると、私の場合、別なところにも関心が移ってしまいます。
当時の流行で、みなさん体に密着したピチピチのユニフォームを着ています。
ラバーの色の制限が緩い時代だったため、青ラバーの選手もいます。
私は青が好きなので、ペンラケットの裏面まで同色で揃えてプレーしている選手がうらやましく思えます。
昔の表ソフトラバーというと、スペクトルのような感じかなと思うかもしれません。
私のコレクションの中に、ヤサカのLi&Liというラバーがあります。
前陣速攻スタイルの全盛時代、中国選手が使っていたものに近いということでいただいたラバーです。
粒はスペクトルよりも低くて小さく、かなり密集しています。
昔のラバーのため、今ではシートとスポンジはカチカチの状態です。
しかし以前の所有者の話によれば、最初からかなり硬めのシート、スポンジだったそうです。
1980年代の代表的な選手に、江加良(ジャン・ジャリャン)、陳龍燦(チェン・ロンツァン)のお二人がいます。
陳選手のサーブはものすごく切れていたそうで、表ソフトとは思えないほどだったそうです。
どんなサーブだったのか体験できたらなぁと思っていると、2年前、中国の方と打つ機会があり、なるほどと感じたことがありました。
その方は布目(粒の上の面のザラザラ)がしっかりついた中国製表ソフトを使っていました。
ややぶっつけ気味に出すサーブは、表なのに脅威の切れ味でした。
周囲の人は全員慣れるまで何度もネットに引っ掛けていて、そこに、まやかしモーションとナックルサーブを混ぜられると、初対面の対戦ではかなり得点できそうでした。
手だけでなく全身を使った鋭い振りで、さらに何かのコツがありそうです。
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今もひっそりと生き続ける
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さてこの中国式前陣速攻ですが、1990年代からは廃れていき、以前ご紹介した劉国梁(リュウ・ゴウリャン)中国男子チーム監督を最後に、チャンピオンに輝く選手はいなくなりました。
ただ、今でもこのスタイルで頑張っている選手はいます。
有名なのは、スペインの何志文(ハ・ジウェン)選手です。
何志文選手は前述の江加良、陳龍燦選手と同じ時代に中国代表メンバーとして活躍しました。
その後スペインに帰化し、51歳の現在もプレーを続けています。
おじさんになってからは1日1時間だけの練習、ラバーは表ソフトなので月に1回の貼り替えで済んでいるそうです。
ちなみに先月(10月)の世界ランキングは66位です。
中国式前陣速攻の最大のメリットは、長く続けられることなのかもしれませんね。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
そこへ敗戦からの復興と時を同じくして、突如日本が輝かしい成績を収め始めました。
シェークハンドの欧米選手を打ち破る、角型日本式ペンホルダー。
無敵の卓球王国時代が続くのかと思われたのもつかの間、強敵が現れました。
そうです中国です。
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用具と戦術の概要
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当時、猛威を振るったのが中国式前陣速攻のスタイルでした。
寸詰まりのシェークハンドラケットのような中国式ペンホルダー。
その可愛らしい形のラケットに表面がツブツブの表ソフトラバーを貼り、卓球台からあまり離れず速いテンポで打ち込む戦法です。
私は小学生の頃、児童館で卓球をしていました。
シェークと日本式ペンの2種類があることは知っていて、ラバーは表面が平らな裏ソフトラバーしか見たことがありませんでした。
ある日、卓球の解説本を見て驚きました。
そこには伝統的な中国式前陣速攻の説明がありました。
風変わりなラケットに、同じく風変わりなラバー。
ページをめくると、他にも見慣れない内容が続きます。
ラケットはペンホルダーの握りなのですが、「わしづかみグリップ」といって、人差し指を親指から離してガバっと握っています。
サーブの連続写真はトスをこれでもかというぐらい高く投げ上げ、近所の児童館だと天井に当たってしまいます。
まるで、アマゾンの奥地に住む珍獣の存在を知ったような気分でした。
中国は、1966-1967年の文化大革命という政治的な理由による大会不参加時期があありました。
また1979年の団体戦は、ハンガリーチーム男子に完全攻略されてしまいました。
それでも1950年代後半から1980年代までの約30年間、この戦法が主流となっていました。
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当時の状況、そして詳細
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ペンの表ソフトで、片面のみにラバーを貼っていたため、現在のような裏面打法という技はありませんでした。
荘則棟(ツァン・ヅートン)選手のように自在にバックハンドを振る選手もいましたが、多くはショートやプッシュを使い、このスタイルは右打ち左押し(右利きの選手の場合)と呼ばれていました。
ネット上にいろいろな動画があり、当時のプレーを見ることができます。
全てのサーブがトスを高く投げる上げるのではなく、バリエーションの 1つとして使う選手が多いようです。
映像を見ていると、私の場合、別なところにも関心が移ってしまいます。
当時の流行で、みなさん体に密着したピチピチのユニフォームを着ています。
ラバーの色の制限が緩い時代だったため、青ラバーの選手もいます。
私は青が好きなので、ペンラケットの裏面まで同色で揃えてプレーしている選手がうらやましく思えます。
昔の表ソフトラバーというと、スペクトルのような感じかなと思うかもしれません。
私のコレクションの中に、ヤサカのLi&Liというラバーがあります。
前陣速攻スタイルの全盛時代、中国選手が使っていたものに近いということでいただいたラバーです。
粒はスペクトルよりも低くて小さく、かなり密集しています。
昔のラバーのため、今ではシートとスポンジはカチカチの状態です。
しかし以前の所有者の話によれば、最初からかなり硬めのシート、スポンジだったそうです。
1980年代の代表的な選手に、江加良(ジャン・ジャリャン)、陳龍燦(チェン・ロンツァン)のお二人がいます。
陳選手のサーブはものすごく切れていたそうで、表ソフトとは思えないほどだったそうです。
どんなサーブだったのか体験できたらなぁと思っていると、2年前、中国の方と打つ機会があり、なるほどと感じたことがありました。
その方は布目(粒の上の面のザラザラ)がしっかりついた中国製表ソフトを使っていました。
ややぶっつけ気味に出すサーブは、表なのに脅威の切れ味でした。
周囲の人は全員慣れるまで何度もネットに引っ掛けていて、そこに、まやかしモーションとナックルサーブを混ぜられると、初対面の対戦ではかなり得点できそうでした。
手だけでなく全身を使った鋭い振りで、さらに何かのコツがありそうです。
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今もひっそりと生き続ける
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さてこの中国式前陣速攻ですが、1990年代からは廃れていき、以前ご紹介した劉国梁(リュウ・ゴウリャン)中国男子チーム監督を最後に、チャンピオンに輝く選手はいなくなりました。
ただ、今でもこのスタイルで頑張っている選手はいます。
有名なのは、スペインの何志文(ハ・ジウェン)選手です。
何志文選手は前述の江加良、陳龍燦選手と同じ時代に中国代表メンバーとして活躍しました。
その後スペインに帰化し、51歳の現在もプレーを続けています。
おじさんになってからは1日1時間だけの練習、ラバーは表ソフトなので月に1回の貼り替えで済んでいるそうです。
ちなみに先月(10月)の世界ランキングは66位です。
中国式前陣速攻の最大のメリットは、長く続けられることなのかもしれませんね。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
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