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前々回はラバーの厚さを大胆に変えようとしている方を紹介しました。

今回はペンからシェークへの転向を試みた人の話をお届けします。


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 研究という位置づけ
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佐々木さん(仮名)は、伝統的な日本式ペンドラ(ペンホルダーのドライブマン)です。

角型の単板ラケットの片面だけに特厚の裏ソフトラバーを貼っています。

ペンホルダー使いがシェークに変えようかと思う理由は以下が多いと思います。

フォアで動き回るのはキツイ、バックハンドでも打っていきたい、時代はシェークハンドだから、等々。

佐々木さんはクールな方で、何かから逃げようとする考えや世の中の多数派がどうのこうのという情緒的思考は一切気にしませんでした。

片面だけのペンドラがフットワークを駆使してフォアハンドで打つのは、傍から見ていると一生懸命さが伝わってきます。

しかし両ハンドで打つシェークのスタイルは、移動量が減り打球時の安定感が増します。

どちらが合理的なスタイルかは明らかで、それを否定する余地はありません。

そこで実際にペンからシェークに変えてみる際、どういうことになるのかを体験してみようと思いました。

佐々木さんはシェークに変えようと決断したのではありません。

週末だけにプレーする一般愛好家です。

その程度の練習量で、今のペンのレベルと同等まで達するのは不可能と割り切っていました。

トップ選手のプレーを見ると誰しもときめくでしょう。

しかしそれについて、3日くらいの練習でチキータができるようにならないかとか、10分でYGサーブが出せないかなどと安直な考えを抱く脳天気な人もいます。

佐々木さんはそういう卓球を舐めるようなことは決してしない人です。

従ってシェークへの転向は100%あり得ないと確信した上で取り組む一種の研究でした。


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 定まった球なら打てる
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最初は卓球マシンを使っての練習です。

普通のフォア、バックのラリーは順調です。

違和感らしきものはありません。

続いてツッツキをやってみます。

バックは問題はなく、フォアにやや難しさを感じました。

切ったボールを送ろうとして手首を振ることは避け、ギプスで固定されたような感覚で返していました。

それだけでは不十分で、佐々木さん的にはラケットを立て気味にしてフォアカットをするような感じにすれば安定するコツが掴めました。

少し無謀かと思ったものの、バックハンドドライブやチキータも試してみました。

思った以上には返球でき、シェークでもいけるのではという錯覚に襲われました。

次に指導員との練習に臨みました。

生身の人間相手だと駄目かなという諦めが半分ありました。

いくつかの修正指導をもらいましたが予想より良い感触でした。

もしかしたらと期待を胸にローテーションで台を移り、練習参加者とオールで打つことにしました。

結果は惨憺たるものでした。

まずレシーブがメタメタです。

たまに来た甘いツッツキもドライブミスの連続です。

そして何気ないふわっと来たチャンスボールをイージーミス。

球拾いの順番になり失意の底でピン球を回収しながら佐々木さんは考えました。


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 原因分析
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相手のスカあたり、ネットにかすったボールなど予想外の返球もペンなら返せています。

それらは無意識で反応するレベルまで体に覚えさせているからでしょう。

シェークでの様々な球さばきを理解し、反復練習でそれが自動的にできるところまで持っていく必要があると思いました。

ここからは佐々木さんの独自解釈ですが、例えとして次のように捉えているそうです。

佐々木さんは関西出身ですが通常は標準語アクセントで話しています。

どちらかへの切り替えは苦もなくでき、1フレーズごとに使い分けることもできます。

英語も基本の意思疎通に支障はなく、主語がSheだから動詞に3人称単数のsをつけなければならないなど会話中に考えたりしません。

She works, She goesなどと何度も繰り返したことにより脳内に神経細胞の繋がりが作られ口が勝手に動きます。

左手で上手く字が書けないのも同じです。

というように、シェークが使いこなせない原因が同じパターンであると理解しました。

そしてラケットをペンに戻しました。

時間や労力を無駄にしたという考えはなく、発見があったと前向きに受け止めています。

最初からシェークを選んでおけばよかったのは事実です。

でも趣味の範疇のためそれを悲観するわけでもないドライな佐々木さんでした。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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