卓球場で一緒に汗を流すお仲間にも、新しい世代の人がどんどん増えています。
先月、弾む接着剤のことについてぼそっと触れると、昔のルールのことは知らない高校生から質問をされました。
ここでは初級レベルの人にもわかりやすく紹介することを目的としていることもあり、今回はその接着剤の件について改めてお話ししたいと思います。
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弾むメカニズム
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弾む接着剤はスピードグルーあるいは省略してグルーと呼ばれていました。
接着剤の位置づけですが接着効果を期待されているのではなく、ラバーの弾みを増すシンナーのような溶剤です。
シンナーは嫌な臭いを発します。
あれは液体が気体に変わり、それに伴う刺激臭が周囲に拡散しているのです。
スピードグルーを卓球ラバーのスポンジに塗ると、スポンジ内の小さな各気泡の中で気化が始まります。
気体はすぐに抜けてしまうわけではなく、一定時間とどまり小さな気泡を押し広げる圧力が発生します。
それがスポンジの弾み効果を増大させ、引いてはボールがよく飛ぶという仕組みです。
2008年まではそれが認められていて、練習や試合前に皆さんがせっせとラバーに塗りたくっていました。
体育館脇の換気の良い場所に専用の塗り場が設けられ、5回だの10回だの塗った回数を自慢する会話も聞こえていました。
卓球ラバーは片面がスポンジでもう一方はゴムシートです。
スポンジ側が膨張してくると、ゴムシート側を内側にする形でラバーが反り返ってきます。
なんとも異様な光景です。
先月、弾む接着剤のことについてぼそっと触れると、昔のルールのことは知らない高校生から質問をされました。
ここでは初級レベルの人にもわかりやすく紹介することを目的としていることもあり、今回はその接着剤の件について改めてお話ししたいと思います。
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弾むメカニズム
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弾む接着剤はスピードグルーあるいは省略してグルーと呼ばれていました。
接着剤の位置づけですが接着効果を期待されているのではなく、ラバーの弾みを増すシンナーのような溶剤です。
シンナーは嫌な臭いを発します。
あれは液体が気体に変わり、それに伴う刺激臭が周囲に拡散しているのです。
スピードグルーを卓球ラバーのスポンジに塗ると、スポンジ内の小さな各気泡の中で気化が始まります。
気体はすぐに抜けてしまうわけではなく、一定時間とどまり小さな気泡を押し広げる圧力が発生します。
それがスポンジの弾み効果を増大させ、引いてはボールがよく飛ぶという仕組みです。
2008年まではそれが認められていて、練習や試合前に皆さんがせっせとラバーに塗りたくっていました。
体育館脇の換気の良い場所に専用の塗り場が設けられ、5回だの10回だの塗った回数を自慢する会話も聞こえていました。
卓球ラバーは片面がスポンジでもう一方はゴムシートです。
スポンジ側が膨張してくると、ゴムシート側を内側にする形でラバーが反り返ってきます。
なんとも異様な光景です。
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卓球を健全なスポーツへ
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見た目以外にも変化はあり、それは打球音に現れます。
当時「金属音」と表現されていた「パキーン」というような甲高い音が打球時に炸裂します。
膨張した気泡が潰されることにより発生する破裂音の集合体なのでしょうか。
ガスが抜けてしまうと弾みは落ち、再び塗ることになります。
シンナーもどきを塗っているので実際健康被害も発生しました。
またこれが「用具のドーピング」と言われ、卓球が怪しげな競技とされてしまう恐れがありました。
打球の威力を求める選手側の反対で解決は長引きましたが、北京オリンピックのあとついに禁止されました。
何度も化学物質を塗られていたラバーは寿命が短く、買い替え頻度が高かったため、メーカーの販売枚数は今より多かったと思われます。
現在販売されている主力ラバーは、テンションスポンジを使ったものが多数を占めます。
このテンションとは、スピードグルーを塗ったような弾む効果を予めスポンジ製造時に施したものという意味です。
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ルールの混乱
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ルールで禁止されたあとはどうなったのか。
シンナーもどきの有機溶剤が体に悪いのだから、それを使わない製品を開発しようという流れが起きました。
従来製品レベルの弾みには及びませんが、いくつかのメーカーが新製品を出しました。
それもつかの間、ITTF(国際卓球連盟)から新たなお達しが出されました。
人体に影響のある物質の有無で判断することはやめ、弾みを増すといった物理的変化を与える「後加工」全てを禁止するということになりました。
単にラバーをラケットに貼る接着剤で、水溶性など無害なものだけがOKとなりました。
試行錯誤して新製品を販売していたメーカーは、はしごを外された形になってしまいました。
開発費を回収できたメーカーは恐らくなかったのではないでしょうか。
また選手の側も短期間で振り回され、これはITTFの失態と言わざるを得ません。
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残された課題
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皆さんが不満を口にしつつ、決まってしまったものには従わないわけにはいきません。
ところが今でもこっそり、いや某中国メーカーなどは堂々と弾みをアップさせる液体を販売しています。
有機溶剤は化学物質を検知すればよかったのですが、そうでないタイプは検出が難しいというのが実情です。
つまり証明されなければ使っていないとみなされてしまうため、その手の製品が存在しているのです。
対策としては検出技術を上げる、何らかの改正で弾みを追求することが無意味になってしまうようにする等、今も検討はなされていると思います。
視点を変えると、世の中にはこれと似たようなことがあちこちにあり、人々が意見をぶつけながらルールや抜け道が生まれていっているのだと感じます。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
卓球を健全なスポーツへ
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見た目以外にも変化はあり、それは打球音に現れます。
当時「金属音」と表現されていた「パキーン」というような甲高い音が打球時に炸裂します。
膨張した気泡が潰されることにより発生する破裂音の集合体なのでしょうか。
ガスが抜けてしまうと弾みは落ち、再び塗ることになります。
シンナーもどきを塗っているので実際健康被害も発生しました。
またこれが「用具のドーピング」と言われ、卓球が怪しげな競技とされてしまう恐れがありました。
打球の威力を求める選手側の反対で解決は長引きましたが、北京オリンピックのあとついに禁止されました。
何度も化学物質を塗られていたラバーは寿命が短く、買い替え頻度が高かったため、メーカーの販売枚数は今より多かったと思われます。
現在販売されている主力ラバーは、テンションスポンジを使ったものが多数を占めます。
このテンションとは、スピードグルーを塗ったような弾む効果を予めスポンジ製造時に施したものという意味です。
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ルールの混乱
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ルールで禁止されたあとはどうなったのか。
シンナーもどきの有機溶剤が体に悪いのだから、それを使わない製品を開発しようという流れが起きました。
従来製品レベルの弾みには及びませんが、いくつかのメーカーが新製品を出しました。
それもつかの間、ITTF(国際卓球連盟)から新たなお達しが出されました。
人体に影響のある物質の有無で判断することはやめ、弾みを増すといった物理的変化を与える「後加工」全てを禁止するということになりました。
単にラバーをラケットに貼る接着剤で、水溶性など無害なものだけがOKとなりました。
試行錯誤して新製品を販売していたメーカーは、はしごを外された形になってしまいました。
開発費を回収できたメーカーは恐らくなかったのではないでしょうか。
また選手の側も短期間で振り回され、これはITTFの失態と言わざるを得ません。
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残された課題
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皆さんが不満を口にしつつ、決まってしまったものには従わないわけにはいきません。
ところが今でもこっそり、いや某中国メーカーなどは堂々と弾みをアップさせる液体を販売しています。
有機溶剤は化学物質を検知すればよかったのですが、そうでないタイプは検出が難しいというのが実情です。
つまり証明されなければ使っていないとみなされてしまうため、その手の製品が存在しているのです。
対策としては検出技術を上げる、何らかの改正で弾みを追求することが無意味になってしまうようにする等、今も検討はなされていると思います。
視点を変えると、世の中にはこれと似たようなことがあちこちにあり、人々が意見をぶつけながらルールや抜け道が生まれていっているのだと感じます。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
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