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中国男子選手の試合を見ていると、なんだかとても気合を入れて選手に喝を与えているコーチを目にすることがあります。

短い髪で若干ふっくらとしたこの方は、劉国梁(リュウグォリャン)コーチです。

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 昔は強かったペン表
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中国の伝統的なスタイルとして、ペンホルダーに表ソフトを貼った前陣速攻型というのがありました。

かつてはこの戦法で世界チャンピオンになった人が何人もいました。

劉コーチはその中の最後の1人と言われています。

最初の1人なら分かりますが、これからも卓球は続くのにどうして最後なのかと疑問に思われる人がいるかもしれません。

現在の卓球は台のそばか、やや離れた所から前進回転をかけたドライブボールを打ち込む戦法が主流かつ、勝ちやすいタイプとなっています。

表ソフトは前陣で打ち合う点では適していると言えますが、回転をかける能力は裏ソフトより劣ります。

そのため現行のルールがこのまま続くと仮定すれば、ペン表ソフトの選手がチャンピオンになるのは難しいと考えられています。


元々、世界的には裏ソフトの選手の方が多数派でした。

中国でもペン表の選手が強かった時ですら、裏ソフトの選手はたくさんいました。

1990年台頃からペン表の選手が上位に上がってくることが減ってきました。

以前ほど勝てなくなってきたため、選手の数も徐々に少なくなりました。

劉コーチはそういう流れの中から現れた選手で、ペン表の救世主になるかもしれない存在でした。


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 劉コーチのプレースタイル
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劉コーチはペンの裏面打法で有名です。

トップ選手が初めて実戦で使い物になることを証明した点を、一番のポイントとして取り上げる人が多いかもしれません。

それはそれですばらしいことだと思います。

ただ私はペン表ソフトが下火になってきた時に、復活ののろしを上げてくれて、表でもまだやれると存在意義を示してくれた功績のほうが大きかったかなと考えています。

今から考えると、それは打ち上げ花火のクライマックスのようであったかもしれませんが。

他にも右足を上げて出す強力なサーブや、表ソフトでもドライブを多用する打法などの特徴がありました。

私の先輩にペン表の人がいて、その方は表ソフトは前進回転をかけるのではなく、角度打ちが大原則という考えでした。

それだけだと当たり前のように聞こえるかもしれません。

その先輩は表でドライブをかけるのはご法度という考えに近く、練習中後輩の表の選手にも「こするな」を連呼していたのを思い出します。

ある交流試合でカットマンの方から、角度打ちだけでなくドライブのかかったボールも混ぜたほうがいいですよとアドバイスをいただいたことがありました。

先輩はそこでもきっぱりと自分のポリシーを主張して、角度打ち+ゴリ押しスマッシュの二択スタイルを貫いていました。

この先輩とは長らくお会いしていませんが、おそらく劉コーチの試合動画を見ていたことと思います。

表ソフトのチャンピオンということで拍手を送る一方、ドライブ多用の打法には眉間にシワを寄せていたことでしょう。


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 ルール改正により引退
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卓球は頻繁にルール改正が行われてきました。

それを機に選手生命を絶たれた選手がいます。

ラバーの両面同色が禁止された際、裏ソフト+アンチラバーを使っていた蔡振華選手が引退に追い込まれたことを以前ご紹介しました。

劉コーチもルール改正により、若くして引退することになりました。

最大の要因は、ボールが38mmから40mmに変更された点だと言われています。

ボールのスピードが落ち、表ソフトの速攻スタイルが効きにくくなりました。

サーブのルール改正もそれなりの影響がありました。

体で打球時の様子を隠すボディハイドサービスは、かなり前から禁止されていました。

しかしトスを上げた手で打球の瞬間を隠しても当時は問題ではなく、劉コーチはこれを利用したサーブを得点源の1つにしていました。

私はこの2つのルール改正については適切なものだったと考えています。

もう1つ語られているのは、ラバーの規格の見直しにより劉コーチが使っていたラバーが使用禁止になったことでした。

これについては、本当に大きな影響があったのか今ひとつ納得できかねるのと、このルール改正の必要性にも疑問を感じています。

特に後者のルール改正の必要性ですが、表ソフトの回転性能を落としたいというのは逆行しているように思え、メーカにとっても迷惑なだけだと感じました。


冒頭に紹介したとおり、劉コーチは熱血漢の人物です。

ややアバウトなところもありますが、喜怒哀楽がはっきりしていて、ベンチで気持ちが高ぶりすぎ退場を食らったこともよくあります。

中国選手には珍しく、現役時代にヒゲを生やしていたこともありました。

得点時のガッツポーズは、気持ちを外に発散させる「陽」のタイプではなく、意外にも喜びを噛み締めるような「陰」のポーズが多かった印象があります。

このとってもアクの強い方は、まだ当面の間は中国ベンチでお目にかかれるようです。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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