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今回は飛び入り参加自由の練習場でお会いした方についてお話しします。

恐らく一期一会になると思われる出会いで、お名前もわかりません。

少しだけ小島よしおさんに似てたかなと思うので、小島さんということにしておきます。


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 何が何でもバウンド直後
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小島さんはあまり見かけることとのない、ペンホルダー表ソフトというスタイルです。

スティガ社のカーボ7.6という中ペン(中国式ペンホルダー)の片面だけに、ミズノの表ソフトラバーを貼っています。

理想としている選手はオールドファンには懐かしい、中国の江加良選手なんだそうです。

パチパチ打法と形容すればいいのでしょうか、ピッチの速い卓球を信条としています。

常にバウンド直後をとらえ振り回してきます。

大学生と打っている姿も見ましたが、相手のブンブンドライブをカウンターで何度か打ち負かしていました。

ただしミスも多く、ツボにはまればたまに大物食いもできる一方、めちゃ打ちで格下に対し自滅することもあると話していました。

なるほどこのタイプにはありがちなことですが、小島さんの場合はそれが激しそうです。

打ち急ぎすぎると思うことはままあり、もうワンテンポ待てばいいのに中途半端な体制のまま早いリターンを優先するケースが目立ちます。

私は手打ちにならざるを得ない場面はそれなりに存在するので、ある程度は許容すべきという考えを持っています。

どんなときにも理想的なフォームだけを主張する人には同意できません。

でもそんな私でも、小島さんのクイック返球を最優先する卓球は度が過ぎていると感じました。

体がほとんど正面を向いていて、表ソフトであるため振りはコンパクトですが、それを考慮してもバックスイングは少なめです。

恐らく球質を見極める選球眼が優れており、そこから判断する最適な打球ポイントと鋭い腕の振りが合わさった結果、いびつながらもそこそこ通用するようになっているようです。


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 世界チャンピオンの謎打法
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小島さんは江加良選手の動画を何度も何度も見てイメージを焼き付けているそうです。

私も何名かのペン表の選手の動画を見てみました。

表ソフトでもドライブを使う劉国梁選手、少し距離を取り両ハンドでカウンターを仕掛ける田崎選手、連打で振り回す何志文選手、といったタイプとは異なり、やはり江加良選手に最も似ていました。

一部の方の間でしか通用しない打法名らしいですが、小島さんは通称「なんば打ち」もやっていました。

歌舞伎の動作で片方の手と足を同時に前に出す動作を「なんば」というそうです。

江加良選手はフォアに打たれたボールに対し、右足を横に踏み出すと同時にフォアで打球することがあります。

普通は右足が床についた後、打球するのですが、着地と打球が同時という変則的動作です。

江加良選手がワルドナー選手との対戦で、このなんば打ちを連続して放っている動画があります。

小島さんはこれをお手本としているようです。

一度だけならとっさにこういう打ち方になったと言えるかもしれません。

でも連打するシーンを目にすると、江選手はなんば打ちを基本打法の一種として取り入れているように思えました。

別の日に指導員の人になんば打ちについて意見を聞いてみましたが「あり得ない」とバッサリ斬られました。

多様な意見を尊重する一方で自分の意見を持つことは大切です。

私はなんば打ちは現実に世界チャンピオンが使っていたことを理解しつつ、その打ち方はやるべきではないという立場です。


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 真似できなかった点
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小島さんは江選手のあらゆる面を取り入れているかというとそうではなく、ラバーはその辺の愛好者でも時々見かける表ソフトでした。

江選手は典型的な中国表ソフトと呼ばれるラバーを使っていたそうです。

シートもスポンジも非常に硬く、顔料多めの低い粒がぎっしり並ぶラバーとのことでした。

今のルールでは粒の密集度合いなどが規格を外れるため使えませんが、似たようなフィーリングのものは現行製品にも存在します。

それを試したものの、全くのお手上げ状態だったそうです。

小島さんのプレーが個性的すぎるのに、さらに得体のしれないラバーを使われたら恐ろしいことになっていたと思い、私はほっと胸をなでおろしました。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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