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今回はずっと前に1度だけお会いしたことのある方について、書きたいと思います。

お名前はわからないので、いつもの通り顔が似ている有名人の名前を使おうと思いました。

ところがその人にあまりよろしくない出来事があり、イニシャルだけにとどめMさんということにしておきます。


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 打法の特徴
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Mさんは50代あたりと思われる男性です。

中ペン(中国式ペンホルダー)の両面に裏ソフトラバーを貼り、両ハンドでカウンターを狙う戦法です。

そのエグさと強烈さを感じ取ってもらえるよう、タイトルに往復ビンタという表現を使ってみました。

フォア面には謎めいた中国製の粘着ラバーを貼っていて、厚さはなぜか極薄です。

バック面はニッタクのファクティブというテンションラバーで、こちらの厚さは中でした。

ツッツキはオモテ面でしますが、フォアとバックは完全にそれぞれ個別の面で打つ王皓選手スタイルです。

とはいってもフォアが極薄というだけあって、ぎゅんぎゅんのドライブを打ってくるわけではなくミート打ち主体です。

バックは対ツッツキには強い回転をかけて返すものの、ラリーになるとフォア同様ミート打ちが基本でした。

なので感じとしては往復ビンタ的になります。


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 お手本とご自身のアレンジ
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大昔、Mさんは片面だけにラバーを貼ったペン表の選手でした。

そこから試行錯誤があり今の戦型に至りました。

お手本としたのは田崎選手でした。

田崎さんは中ペンの表ですが、バウンド直後を捉え速いピッチで振り回す典型的な前陣速攻スタイルではありませんでした。

ある程度間合いを取ってつなぎ、両ハンドからスマッシュを放つ戦法でした。

なるほどそういうコア部分はMさんのプレーにかなり重なります。

そこに独自の変更を取り入れ、フォアは表ソフト的な極薄裏ソフトでのミート打ち、バックは裏面打法でコンパクトな振りのカウンターという姿にアレンジしています。


ラケットの握りは極端なわしづかみグリップです。

両面のラバーは、シェークと同じようにグリップ先端との隙間を空けずに貼っています。

そのラバーの真っ直ぐなラインが、ラケットの縁に当たる部分に人差し指の第一関節を当てるようガキッと掴みます。

王皓選手や馬琳選手のような人差し指を巻きつける握りとは正反対です。


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 合理的な説明
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Mさんは裏面打法を取り入れた理由を複数語ってくれました。

バックからドライブが打てる、カウンターも打ちやすい、リーチが長くなる等々、いずれも裏面打法を挫折してやめてしまった私には痛い言葉でした。

特にリーチの長さについての説明は合理的すぎます。

ペンのオモテ面を使ったショートは肘が体に当たってじゃまになり、その分リーチも短くなります。

ペンで裏面を使えるとシェークに迫るリーチが確保でき、オモテ面ショートより実質的にコントロール自在なストライクゾーンは10数センチから20センチ近く広がります。

考え方を変えれば、卓球台のサイズが変わったとも捉えることができます。

これはものすごい差であるとMさんは台の所でそれぞれを比較して示し、熱く熱く語ってくれました。

いやーおっしゃる通りで、両面にラバー貼れば重くなるでしょというような、ちっぽけな反論なんて全くできません。


Mさんはバック側のツッツキも裏面ですることも一時期考えました。

しかしペン裏面のツッツキは角度が出しにくく、十分に試してみた上で取り入れるのはやめました。

片面ペン表のときは構える位置は右足がコートの端に近い位置でした。

今はセンターラインに近く、フォアに飛ばされバックを潰される展開は少なくなりました。


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 年齢を意識した競技への向き合い方
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私はMさんを「往復ビンタ」と言い表しましたが、Mさんはバックハンドだけですが「裏拳しばき」とご自身で名付けていました。

子供の頃、京都の人が「しばきあげる」と言うのを聞いて、関東人のMさんは「差し上げる」など、なにか丁寧な所作のことだろうと思っていたそうです。

その後「しばく」は平手打ち「どつく」はゲンコツを振るうという意味合いがあると知り、ある日それを思い出して「裏拳しばき」にしました。


Mさんには別の思いもあり、裏面で打つのは移動量が減り選手寿命も伸びるはずと考えています。

一方で年齢的な衰えは色んな部分に少しずつ現れ、特にフォアを今のような感じでビシャビシャ叩くのは限界に近づいてきたとの認識をされています。

極薄粘着ラバーのクセ球は相手が取りづらい反面、打つ側も瞬時に球質を見極め打法を判断するシビアさが求められます。

私が使っているようなかなり柔らかく分厚いスポンジのラバーは、若干判断がぶれても、ペシッとめり込ませてからなんとか返せてしまえる場合があります。

Mさんも「ボールをつかんでいる感触」のメリットは認めていて、現在気持ちが揺らいでいるそうです。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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