普段自分がお目にかかることのないスタイルや打法にめぐり会うと、どう対応すべきか面食らうことがあります。
今回はそのいくつかをご紹介します。
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カーブドライブ
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ドライブはボールの後ろをこすり上げ、前進回転を与える打法です。
カーブドライブはボールを捉える位置を後ろではなく、内側に巻き込むよう横側をこすって打つ打法です。
カットマンが失速気味のボールを返す場面などで織り交ぜます。
ボールの勢いがなく十分なカットが出来ない場合、ダウンスイングではなくアッパースイングで返球することがあります。
そのまま素直に返すと相手の絶好球となるため、横回転を入れたカーブドライブで強打をさせにくくする狙いがあります。
映像ではたまに見ることがあるのですが、私は実際の練習や試合で使う方に出会ったことがありませんでした。
少し前にAさんと打った時、初めてカーブドライブを実体験しました。
右利きのAさんがフォアから放つ横回転ボールをフォアで合わせ打つのですが、自分のバック側に反れてしまい相手コートに入りません。
連続3回同じ失敗をして、4回めにラケットをフォア側に流すようにすることでようやく返球できました。
普通のドライブでも人によって若干横回転が入っていることがあります。
そういう場合は少し違和感があるだけで返せていましたが、Aさんのほぼ真横回転のボールはどう返球すべきかという動作が、私の中にパターンとしてありませんでした。
これが横回転のサーブであれば、カーブ回転、シュート回転どちらでも、相手がこすった方向に応じて自分のラケットの面をどう合わせるべきか、スッと体が動きます。
まず回転に対する理論を覚え、次にそれをパターン練習して体に覚え込ませているのです。
ところがカーブドライブについては、私の中にパターン化された回路が存在しません。
そこで左回転しているボールだから、ラケットに当たると左側に反れるので面を右側に向ける必要がある・・・と考えることになります。
このように考えている間は、実際のボールを返すことはできません。
全く別の例でも同じことが当てはまります。
外国の方で日本語の物の数え方に苦労している人がいます。
一本は「いちほん」ではなく「いっぽん」、三本は「さんほん」ではなく「さんぼん」とさらっと言えるのは、反復練習によって私達の頭の中にそのように読む回路が焼き付いていて、考える過程が消滅しているから です。
鉛筆が一つだから「いちほん」じゃなくて「いっぽん」だな・・・と考えながら話されると、もどかしくてイライラすることがあります。
逆の例で簡単なものを挙げると、英語で主語が三人称単数の時、動詞にsをつけます。
ええっと、主語がSheだからcomeじゃなくてcomesだな。
そんな初級コースの生徒を相手にしている外国語講師は、さぞやストレスがたまっていることでしょう。
しかも疑問文や否定文なら三人称単数でもcomesじゃなくてcomeになります。
こんなのは朝昼晩、駅のホームやトイレの中で何度も何度も呪文のように繰り返し、パターンを覚えこませるしか方法はありません。
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粒高らしくないスタイル
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さて卓球の話に戻りますと、粒高ラバーを使う選手はそのラバーが放つ独特の変化球を武器にしています。
裏ソフトに慣れた人達に、パターンが異なるクセ球を送り相手を惑わせます。
これについても対策方法は粒高ラバーの人と打つ機会を増やし、このラバー特有のボール、そして得点パターンに慣れることです。
何のへんてつもないツッツキをバックに送ると、待ってましたとばかり強烈なプッシュでエグいボールを返されてしまいます。
中高年のママさんプレーヤなどで時々お相手することがあるタイプで、それなりの対策も持ち合わせていたつもりでした。
ある時、中年男性Bさん(ペン粒高一枚ラバー)と試合をしました。
セオリー通りの展開になると予想していたら、かなり異なるスタイルでした。
ブロック主体ではなく、果敢に打ち込んできます。
粒高は魔球が出せる一方、コントロールしにくいので、面を合わせたブロックやダウンスイングが多くなります。
アッパースイングはかなり難しく、そんなに連打できないはずとたかをくくっていました。
しかしBさんは、よくまあ何発も打ってくるものだと感心してしまいます。
返されると当然それはへんてこ回転のボールなので、こちら側が苦しくなります。
ツッツキをプッシュで返してくることもありません。
のれんをめくり上げるような仕草でボールをふわっとネット際に落す必殺技も披露いただき、5本ほどノータッチを決められました。
基本的な実力はBさんのほうがはるかに上です。
しかしそれ以上にこれまで経験した対戦パターンに存在しない戦法で、どう攻めていけばよいのか、あれこれ考えているうちにストレート負けしてしまいました。
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ミラクル打法
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極めつけはXさんとの試合のエピソードです。
Xさんは全日本選手権の本戦にも出場している超上級者です。
某所でXさんと1ゲームだけ試合をする機会がありました。
希望者は一列になり順番を待っていました。
私の番になり、当然のことながら適当にあしらわれていました。
ゲームの後半でXさんのバックにボールを送ると、体の後ろにラケットを回し後ろ手で返球されてしまいました。
私のフォアへノータッチで抜けていき、周りのギャラリーは歓声をあげていました。
動画では見たことがありましたが、まさかそんなプレーを実演されてしまうとは夢にも思いませんでした。
その日はちょっぴり、いや、かなりのダメージを受け、たぶん一生忘れないと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
今回はそのいくつかをご紹介します。
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カーブドライブ
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ドライブはボールの後ろをこすり上げ、前進回転を与える打法です。
カーブドライブはボールを捉える位置を後ろではなく、内側に巻き込むよう横側をこすって打つ打法です。
カットマンが失速気味のボールを返す場面などで織り交ぜます。
ボールの勢いがなく十分なカットが出来ない場合、ダウンスイングではなくアッパースイングで返球することがあります。
そのまま素直に返すと相手の絶好球となるため、横回転を入れたカーブドライブで強打をさせにくくする狙いがあります。
映像ではたまに見ることがあるのですが、私は実際の練習や試合で使う方に出会ったことがありませんでした。
少し前にAさんと打った時、初めてカーブドライブを実体験しました。
右利きのAさんがフォアから放つ横回転ボールをフォアで合わせ打つのですが、自分のバック側に反れてしまい相手コートに入りません。
連続3回同じ失敗をして、4回めにラケットをフォア側に流すようにすることでようやく返球できました。
普通のドライブでも人によって若干横回転が入っていることがあります。
そういう場合は少し違和感があるだけで返せていましたが、Aさんのほぼ真横回転のボールはどう返球すべきかという動作が、私の中にパターンとしてありませんでした。
これが横回転のサーブであれば、カーブ回転、シュート回転どちらでも、相手がこすった方向に応じて自分のラケットの面をどう合わせるべきか、スッと体が動きます。
まず回転に対する理論を覚え、次にそれをパターン練習して体に覚え込ませているのです。
ところがカーブドライブについては、私の中にパターン化された回路が存在しません。
そこで左回転しているボールだから、ラケットに当たると左側に反れるので面を右側に向ける必要がある・・・と考えることになります。
このように考えている間は、実際のボールを返すことはできません。
全く別の例でも同じことが当てはまります。
外国の方で日本語の物の数え方に苦労している人がいます。
一本は「いちほん」ではなく「いっぽん」、三本は「さんほん」ではなく「さんぼん」とさらっと言えるのは、反復練習によって私達の頭の中にそのように読む回路が焼き付いていて、考える過程が消滅しているから です。
鉛筆が一つだから「いちほん」じゃなくて「いっぽん」だな・・・と考えながら話されると、もどかしくてイライラすることがあります。
逆の例で簡単なものを挙げると、英語で主語が三人称単数の時、動詞にsをつけます。
ええっと、主語がSheだからcomeじゃなくてcomesだな。
そんな初級コースの生徒を相手にしている外国語講師は、さぞやストレスがたまっていることでしょう。
しかも疑問文や否定文なら三人称単数でもcomesじゃなくてcomeになります。
こんなのは朝昼晩、駅のホームやトイレの中で何度も何度も呪文のように繰り返し、パターンを覚えこませるしか方法はありません。
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粒高らしくないスタイル
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さて卓球の話に戻りますと、粒高ラバーを使う選手はそのラバーが放つ独特の変化球を武器にしています。
裏ソフトに慣れた人達に、パターンが異なるクセ球を送り相手を惑わせます。
これについても対策方法は粒高ラバーの人と打つ機会を増やし、このラバー特有のボール、そして得点パターンに慣れることです。
何のへんてつもないツッツキをバックに送ると、待ってましたとばかり強烈なプッシュでエグいボールを返されてしまいます。
中高年のママさんプレーヤなどで時々お相手することがあるタイプで、それなりの対策も持ち合わせていたつもりでした。
ある時、中年男性Bさん(ペン粒高一枚ラバー)と試合をしました。
セオリー通りの展開になると予想していたら、かなり異なるスタイルでした。
ブロック主体ではなく、果敢に打ち込んできます。
粒高は魔球が出せる一方、コントロールしにくいので、面を合わせたブロックやダウンスイングが多くなります。
アッパースイングはかなり難しく、そんなに連打できないはずとたかをくくっていました。
しかしBさんは、よくまあ何発も打ってくるものだと感心してしまいます。
返されると当然それはへんてこ回転のボールなので、こちら側が苦しくなります。
ツッツキをプッシュで返してくることもありません。
のれんをめくり上げるような仕草でボールをふわっとネット際に落す必殺技も披露いただき、5本ほどノータッチを決められました。
基本的な実力はBさんのほうがはるかに上です。
しかしそれ以上にこれまで経験した対戦パターンに存在しない戦法で、どう攻めていけばよいのか、あれこれ考えているうちにストレート負けしてしまいました。
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ミラクル打法
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極めつけはXさんとの試合のエピソードです。
Xさんは全日本選手権の本戦にも出場している超上級者です。
某所でXさんと1ゲームだけ試合をする機会がありました。
希望者は一列になり順番を待っていました。
私の番になり、当然のことながら適当にあしらわれていました。
ゲームの後半でXさんのバックにボールを送ると、体の後ろにラケットを回し後ろ手で返球されてしまいました。
私のフォアへノータッチで抜けていき、周りのギャラリーは歓声をあげていました。
動画では見たことがありましたが、まさかそんなプレーを実演されてしまうとは夢にも思いませんでした。
その日はちょっぴり、いや、かなりのダメージを受け、たぶん一生忘れないと思います。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
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