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今回は、私の学生時代の先輩Nさんについてお話します。

喜怒哀楽の激しいちょっと変わった人で、いくつかの言動にはみなさんの周囲にいる方にもどこか共通する部分があるかもしれません。


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 相手の用具に対するこだわり
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Nさんは相手の用具を鋭く観察します。

試合開始前はラケットを見せてもらい、どんなラバーを貼っているか確認します。

一番比率の多いシェーク裏裏なら、別に見せるほどのことはないと思っている人もいて、「裏裏です」と言葉で伝えるだけで相手も納得するケースが少なくありません。

Nさんは仮にそう言われても、必ず相手のラケットを確認するようにしています。

確かにラケットを見せるのを拒むことはできませんから、Nさんの要求には応じなくてはなりません。

私も相手のラバーを実際に見て確認したい場合はあります。

表ソフトや粒高ラバーのときがそうです。

福原選手のような粒が少し高めの変化系表は、ナックルボールが多そうかなとか、サーブの回転をごまかしても返されてしまいそうとか、心の準備が必要です。

粒高でも粒が長い短い、太い細いなどを見て、第1ゲームは相手のプレーと併せて情報分析に注力します。

Nさんは裏ソフトでも表ソフトでもスポンジの厚さまで確認し、粒高の場合は粒形状までさらに入念にチェックします。

そのため普通の人より時間がかかります。

すると相手はどう思うか、もうお分かりですね。

イライライラ・・・


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 怒りが爆発した試合
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逆に、試合開始直前にNさんがずいぶん険しい表情をしていたことがありました。

あとで話を聞いてみると、ラバーの確認でとても腹が立ったとのことでした。

対戦相手はバック側にアンチラバーを貼っていたそうで、Nさんは久しぶりに出会った珍品をじっくり観察していました。

試合で使うラバーはITTFのロゴマークと共に、製品名も残した形で貼ることになっています。

アンチラバーは通常「○○anti」か「anti○○」といった名前が付けられているのですが、そういったネーミングではないラバーだったそうです。

そこで相手に「これってアンチかな?」と尋ねたところ、「さあ、どうだろう」という答えが返ってきました。

「製品名を見て君が判断してよ」ということなのでしょうか。

ルール上、ラバーは見せなければなりませんが、どういう分類になるラバーか答える必要はありません。

アンチラバーなんて表面がつるつるですから、触ればすぐに分かります。

でもこの相手の返事でNさんはキレてしまいました。


ラブオール直後のサーブでNさんはサーブミスをしてしまいました。

その時、対戦相手の顔が笑っているように見えたそうです。

(Nさん、お願いですから落ち着いてください!)

運の悪いことに、その時の審判は新入生の女子生徒が担当していました。

とっても険悪な雰囲気にビビっていて、点数のコールもか細い声でした。

Nさんの怒りはそんな審判にも向けられ、「もっと大きな声ではっきり言ってくれ」と要求します。

一度カウンターをめくり忘れ、Nさんの得点が1点少なかったことがありました。

追い打ちを掛けるようにそれについても厳しく叱責すると、「すみません」と言いながら涙を流していました。

相手はアンチラバーを貼っているだけあって、ラケットをくるくる反転させ、カットしたりドライブしたりと変則的なプレーをする人でした。

Nさんはなんとか勝ったものの、当然握手はせず、すぐにその場を立ち去りました。

試合のレベルは月とすっぽんほどの差がありますが、今年のジャパン・オープン最終戦同様、たいへん後味の悪い試合でした。


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 常に刺激を与えてくれる人
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Nさんは練習中、私にもいろいろと突っ込みを入れてくる人でした。

私はランニングで疲れてくると、手がグーではなく、指をだらりと垂らした形で腕を振る傾向があります。

それを見て「アヒルが水をかいているのにそっくりだ」とみんなの前でからかわれたことがありました。

ふざけて腕をつかまれた時は、思いのほか柔らかかったので、「お前の腕、女みたいだな。もっと肉食えよ」と食生活のアドバイスをもらったこともあります。


そんなNさんに、私も指摘したかったことは何度もありました。

ミーティングで「地面スレスレのボール」と言っていたのは、「床スレスレ」と表現するほうが適切です。

ネットにも同じことが書いてありましたが、集中しろという意味で「五感を研ぎ澄まして」という一瞬かっこ良く聞こえるお話は、「感覚を研ぎ澄まして」だと思います。

匂いや味は関係無いですよね。

実際にそんなことを言えば、飛び蹴りを食らうのは必至なので誰も言いませんし、言った所でその後のご本人の言動に変化はないでしょう。

こんな感じの方に出逢うと、いつもNさんを思い出してしまいます。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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