今回も某卓球場でお会いした一般愛好家の人について、お話ししたいと思います。
私がこれまでご紹介した人物は、個性的な方が多いと思われているかもしれません。
もちろんシェークハンドラケットで両面に裏ソフトラバーを貼り、穏やかな性格の人というのはたくさんいらっしゃいます。
しかしそういう人を取り上げるのは、例えて言えば「情熱大陸」で20年間経理担当のサラリーマンを紹介するのと同じだと考えています。
従って今回も癖の強い方となります。
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熱量に満ちた人
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ご紹介するのは中年男性で、とっても自己主張の強い方です。
トランプ大統領はこんな感じだろうと勝手に決めつけ、お名前はTさんということにしておきます。
Tさんは人の話をほとんど聞かず、自分の考えや主張を一方的にまくしたてるように話します。
休憩中ベンチに腰掛けていると話しかけられ、私は張り子の虎のようにうなずいていました。
Tさんは中ペン(中国式ペンホルダー)の両面に、裏ソフトラバーを貼ったプレースタイルです。
前回はバックハンドドライブに魅せられた人をご紹介しました。
Tさんも同じく、ここ最近はバックハンドを重点的に練習しているとのことでした。
自分でつかんだ打球感覚を他人にも話したくてウズウズしていたのでしょうか、私に熱い口調で語ってきます。
「台上の短いボールに横回転を掛けて返す、いわゆるチキータの場合、時計の2時に相当する場所にボールを当てるんだ」(右利きの場合。以降同様)
「それによって遠心力を利用できコンパクトな鋭いスイングで効果的なボールが打てるのサ」
そう言いながらラケットを目の前で何度もビュンビュン振り回します。
「スイングがぶれないよう、打つ前にラケットの先を卓球台に接触させておくのがミソだよ」
激しく擦れたラケットの先端を私に見せます。
「でも台から出るような長いボールは安定性重視に切り替え、今度は文字盤の4時のあたりで打つんだ」
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ぶつかった壁
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一応卓球場にもソーシャルディスタンスを保つよう、壁にお願いが書かれてあるのですが、トランプいやTさんはあまり気にしていなく至近距離でしゃべり続けます。
そういうコツをつかむことができたのは、卓球マシンを使った反復練習の成果でした。
ところが予想外だったのは、生身の人間を相手にした練習との相違でした。
人によって出してくるボールは異なり、同じ人でもばらつきがあります。
長さやコースのブレはマシンより大きく、相手のレベルが高くない時はスカあたりも時折混じります。
それに対しTさんはイラッときていたそうですが、これがまさにリアル人間との卓球なんだと気づき受け入れたそうです。
短すぎるボールは裏面でのツッツキに切り替え、右胸辺りのミドルに近いボールもチキータを見送る割合を増やしました。
そしてさらに慎重になったのは実際の試合でした。
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折り合いをつけた現在のプレー
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練習の甲斐あってチキータやバックハンドドライブはそれなりに打てるようになりました。
バックから仕掛けてくる人はそれほど多くないので、一発打てば決まるケースもあります。
しかしいかんせんTさんのバックハンド攻撃はまだ失敗も多かったのです。
「いやー、これがショックだったね」
しみじみしたような表情で私に同意を求めてきます。
練習ではあまり気に留めていませんでしたが、試合でミスをすると当然相手に点が入ります。
1ゲームは11点なので例えば2本連続してチキータをミスれば、さすがのTさんでもちょっとプレーが荒っぽいかなと自重する気持ちになります。
YouTubeで見るトッププレーヤーの動画と自分の卓球は違うのだと悟ったそうです。
それにネットの動画って、うまく決まったベストショット集の場合もありますからね。
私はTさんも結構ちゃんと考えているじゃないと思いかけたのですが、続いて私のプレースタイルに質問をぶつけてきました。
「なんで今どき時代遅れの片面ペンホルダーなの」
「絶対裏面振るべきだよ」
たぶん私がどう答えてもTさんは主張を曲げないはずで、苦笑いの表情のまま耐えていました。
私の返事はどうでもよく、言いたいことを口にしてスッキリしたようで更衣室に消えていきました。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
私がこれまでご紹介した人物は、個性的な方が多いと思われているかもしれません。
もちろんシェークハンドラケットで両面に裏ソフトラバーを貼り、穏やかな性格の人というのはたくさんいらっしゃいます。
しかしそういう人を取り上げるのは、例えて言えば「情熱大陸」で20年間経理担当のサラリーマンを紹介するのと同じだと考えています。
従って今回も癖の強い方となります。
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熱量に満ちた人
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ご紹介するのは中年男性で、とっても自己主張の強い方です。
トランプ大統領はこんな感じだろうと勝手に決めつけ、お名前はTさんということにしておきます。
Tさんは人の話をほとんど聞かず、自分の考えや主張を一方的にまくしたてるように話します。
休憩中ベンチに腰掛けていると話しかけられ、私は張り子の虎のようにうなずいていました。
Tさんは中ペン(中国式ペンホルダー)の両面に、裏ソフトラバーを貼ったプレースタイルです。
前回はバックハンドドライブに魅せられた人をご紹介しました。
Tさんも同じく、ここ最近はバックハンドを重点的に練習しているとのことでした。
自分でつかんだ打球感覚を他人にも話したくてウズウズしていたのでしょうか、私に熱い口調で語ってきます。
「台上の短いボールに横回転を掛けて返す、いわゆるチキータの場合、時計の2時に相当する場所にボールを当てるんだ」(右利きの場合。以降同様)
「それによって遠心力を利用できコンパクトな鋭いスイングで効果的なボールが打てるのサ」
そう言いながらラケットを目の前で何度もビュンビュン振り回します。
「スイングがぶれないよう、打つ前にラケットの先を卓球台に接触させておくのがミソだよ」
激しく擦れたラケットの先端を私に見せます。
「でも台から出るような長いボールは安定性重視に切り替え、今度は文字盤の4時のあたりで打つんだ」
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ぶつかった壁
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一応卓球場にもソーシャルディスタンスを保つよう、壁にお願いが書かれてあるのですが、トランプいやTさんはあまり気にしていなく至近距離でしゃべり続けます。
そういうコツをつかむことができたのは、卓球マシンを使った反復練習の成果でした。
ところが予想外だったのは、生身の人間を相手にした練習との相違でした。
人によって出してくるボールは異なり、同じ人でもばらつきがあります。
長さやコースのブレはマシンより大きく、相手のレベルが高くない時はスカあたりも時折混じります。
それに対しTさんはイラッときていたそうですが、これがまさにリアル人間との卓球なんだと気づき受け入れたそうです。
短すぎるボールは裏面でのツッツキに切り替え、右胸辺りのミドルに近いボールもチキータを見送る割合を増やしました。
そしてさらに慎重になったのは実際の試合でした。
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折り合いをつけた現在のプレー
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練習の甲斐あってチキータやバックハンドドライブはそれなりに打てるようになりました。
バックから仕掛けてくる人はそれほど多くないので、一発打てば決まるケースもあります。
しかしいかんせんTさんのバックハンド攻撃はまだ失敗も多かったのです。
「いやー、これがショックだったね」
しみじみしたような表情で私に同意を求めてきます。
練習ではあまり気に留めていませんでしたが、試合でミスをすると当然相手に点が入ります。
1ゲームは11点なので例えば2本連続してチキータをミスれば、さすがのTさんでもちょっとプレーが荒っぽいかなと自重する気持ちになります。
YouTubeで見るトッププレーヤーの動画と自分の卓球は違うのだと悟ったそうです。
それにネットの動画って、うまく決まったベストショット集の場合もありますからね。
私はTさんも結構ちゃんと考えているじゃないと思いかけたのですが、続いて私のプレースタイルに質問をぶつけてきました。
「なんで今どき時代遅れの片面ペンホルダーなの」
「絶対裏面振るべきだよ」
たぶん私がどう答えてもTさんは主張を曲げないはずで、苦笑いの表情のまま耐えていました。
私の返事はどうでもよく、言いたいことを口にしてスッキリしたようで更衣室に消えていきました。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
それでは、また次号をお楽しみに。
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