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前回は、古い卓球理論について怒りを爆発させたAさんのお話でした。

今回も引き続き、お伝えできなかった喫茶店での会話をご紹介いたします。

それではAさん、張り切ってお願いします。


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 出すぎた真似をするんじゃない
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まだ時代は昭和だった頃、ある日のミーティングで、Aさんは練習について提案をしました。

「左右を往復するだけのフットワーク練習はやってもムダなので、別の内容に変えませんか」

「むむっ!本質を突いたなんて鋭い意見を言うヤツなんだ」

Aさんはそのように評価されたでしょうか。

いいえ、みなさんもお察しの通り、全く正反対の反応でした。

「往復フットワークは、世界中の選手がやっている基本練習のイロハの『イ』なんだ」

世界中の選手というのは勝手な思い込みで、実際にも正しくないそうです。

まあそんなことよりもAさんの意見を聞いた先輩たちは、「生意気だ」「何様のつもり」など即座にカチンときてしまったんでしょう。

脈々と受け継いできたことを否定され、自分たちは何も考えていなかったという証明になってしまうのが嫌だったのかもしれません。

当時はまだ人生経験も少ないAさんですが、今の聖域なき毒舌ぶりから考えると、提案の切り出し方がストレートすぎて怒りを買った可能性があります。

Aさんの提案を論理的に考えてみようという判断すらされず、脊髄反射のように却下されてしまいました。

そしてミーティングのあと、

「そういうお前はどれだけ強いんだ」

という捨て台詞もいただいたそうです。

私は「それでも、言ったほうが良かったですよね」と言うと、Aさんは目を細めて「そうなんだ。全く悔いはなかったんだ」とうなずきました。

別に同情する気持ちはなく思ったままをぼそっと言っただけでしたが、これがAさんの心に響き、喫茶店を出る時に「今日は俺のおごり」と言われました。

ラッキー


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 「和の精神」と「努力」
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この話は、結構考えが硬直してしまっている組織の例ではないかと思います。

それだけでなく、日本人的な従来を踏襲し、組織の雰囲気を読むことが求められる場面を写した1コマなのかもしれません。

他の国と比較すると、日本人に共通する「ある考え」がいろいろな場面で観察できるらしいのです。

私の手元にある記事だと、マサチューセッツ工科大学で11年前に行われたスピーチの中に面白いものがあります。

それはステファノポーラス教授が、日米のプロ野球の違いについて触れた部分です。

日本のチームには、「和の精神」と「努力」という2つの原理原則があるそうです。

最初の「和の精神」の例として、巨人軍が米国選手に要求した「十戒」というのがあったそうです。

・監督の命令には従い、作戦を批判するな

・ダッグアウトで騒ぐな、物を壊すな、ユニフォームを大切にしろ 等

2番目の「努力」の例としては、日米の選手の考え方の相違を挙げています。

(日本人選手)

・自分にとって一番良いことは、監督やコーチが知っている。

・野球は生き方そのものであり、能力は努力から生まれると信じている。

・あの王貞治も努力ということを強調している。

(米国人選手)

・選手は一人一人自分で責任を持つ。

・試合で何が出来たかが重要であり、自分にとって一番良いことは自分が知っている。

・能力は生まれつきと考える。


「和の精神」と「努力」が象徴されているのがトレーニングで、日本野球のトレーニングはクレイジーと見なされているようです。

・日本では考え方が宗教に近い。

・時間は1日7時間、10マイルのランニングがあり、さらにミーティング。

・態度も問われる。球場には15分前に集合。フィールドで私的会話は禁止。

・日本チームは、相談、会議に時間をかける。


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 双方のいいとこ取りができれば
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あらゆることを上記の原理原則に当てはめるつもりはありません。

しかしながら、卓球においても似たような感覚のものは見受けられます。

Aさんの話の例のように、上位の人にモノ申したり、既存のものを否定するのは控えたほうが、、、という雰囲気はなんとなくあるでしょう。

団体戦での声を揃えた応援、前後左右にお辞儀をする、卓球部員でも男子の髪型が全員丸刈り、ハチマキをしている選手、などは宗教的に映るかもしれません。

私はこの米国教授の話を、悲観的な方向からのみ捉えてはいません。

物事は論理的に考えるべき点や、闇雲に努力を強いるのはやめるべきなのには同意します。

でも礼儀正しくすることは大切で、執拗なクレームや投げやりな行為が日本人選手に少ないのは、良い面として現れていると思います。

外国では卓球台に腰掛けたり、台の上に立ったりすることもありますが、日本だとご法度に近いといったあたりは、日本人的思考っぽくて興味深いですね。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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