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街を歩いていると老若男女いろんな方にすれ違います。

その中の何人かに1人は卓球プレーヤーです。

まさに今、山手線や環状線に乗ってぐるぐる回っている無名の競技者も10人ぐらいはいるはずです。

そういったごく普通のプレーヤーを紹介するのも面白いかもしれません。

そこで今回は、3名の方にご登場いただきます。


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 Nさん:60代男性、卓球歴ウン十年
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Nさんは数回練習をご一緒させてもらった方で、最後にお会いしたのは昨年の秋でした。

その時はミズノ製日本代表モデルのユニフォームを着用されていたので、特に印象に残っています。

ただし下はハーフパンツ&スケスケの黒いビジネス用ソックスだったため、全体のコーディネイトにもう少し工夫があれば良かったのにと思いました。

Nさんは語尾を上げ、演説をするように話します。

「そもそもぉー、ぼくらの世代はねぇー」

「いーっぱんてきにぃー、バックハンドの場合はぁー」

ちょっと鼻につきますね。

Nさんがいない時に女性陣が「あたしあの人キザっぽいからイヤ」と、話し方を真似して盛り上がっていたこともありました。

Nさんはかつて教壇に立っていて、現在は退職されているそうです。

つまり生徒に注意を向けさせるためああいった話し方になり、それが通常の会話にも染みついてしまったのでしょう。

一種の職業病なので同情してしまいます。

日本式ペンホルダーのことを「にっぺん」、JTTAAを「じぇった」と呼ぶので、最初に聞いたときは戸惑いました。

更衣室で着替える時は、自分を中心に服やシューズを土星の輪のように並べて広いスペースを占領します。 こういうマイペースな方ですが、細やかな部分もあります。

ラケットケースでボールケースが合体しているタイプがあります。

Nさんはそのボールを入れる所に、爪切り、バンドエイド、ホテルでもらった石鹸、リップクリーム、小型のクシなどを詰め込んでいます。

是非参考にしたい活用事例ですね。

また練習中はクッキングタイマーで10分ごとにローテーションをしますが、タイマーの故障が分かったとき、瞬時にNさんご自身の携帯電話で代用するという機転のきく人でもあります。


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 Kさん:20代女性、初級者
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Kさんは声に特徴があります。

羽田で京急を待っている時に流れていた自動アナウンスの声に似ています。

あのアニメ風のとろけるような甘い響き。

その声とは裏腹に、ラケットのグリップは鋭く尖っています。

角丸型の日本式ペンホルダーで、人差し指を引っ掛けるコルク部分の先端を船のへさきのように三角形に削っているのです。

そんな形だと普通は指が痛くなってしまいます。

Kさんは、その変形グリップを親指と人差し指で両側からつまむようにして握っていました。

好奇心旺盛な私はその謎に迫るべく、Kさんにとんがりグリップに至った理由を聞いてみました。

ある方からいただいたラケットで、以前の所有者は左利きだったそうです。

そのため左側の角が削られていました。 Kさんは右利きなので、人差し指が触れる右側を削りこの形になったということが分かりました。

後日お会いすると、ラケットはシェークハンドに変わっていました。

シェークのほうが合理的だと思い「裸ラケットとラバー」を買ったそうです。

「裸ラケット」? ラバー貼りラケットじゃない、ブレード単体のラケットということですね。

女性なので、リカちゃんやバービーのような着せ替え人形のイメージがあるのでしょうか。


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 Yさん:40代?女性、初心者
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2本のラケットの打ち比べをしようと思い、1本は台上のネットの手前に置いてYさんと打ち始めました。

するとボールを打つのを中止して「そのラケットをどけてもらえませんか」とおっしゃいます。

別に試合をしているわけではありませんし、どういう不都合があるのかやんわりと尋ねてみました。

「そこにラケットがあると落ち着いて打てないんです」

え、、、別にこれくらい、という言葉を飲み込み「じゃあ片づけますね」と笑顔を保ったまま台の下に移しました。

しばらく打っていて、ネット際にボールがとどまった状態になりました。

そのまま別のボールを使って打ち始めようとした時、Yさんはこちらに向かって歩いてきて私の側のネット際にあるボールをつまみ上げました。

「気になりますので」

Yさんはまだ多球練習をしたことがない人なのでしょう。

ネット際に何個もボールがある状態を体験すれば免疫ができると思います。

ただどうしてそんなに台上に物があると気になるのか、私はそこが不思議でなりませんでした。

最近ボーイング787のニュースがよく報じられますが、ある日はっと気が付きました。

Yさんはもしかすると卓球台の上は滑走路のように、一切の障害物があってはならないとお考えなのかもしれません。

卓球台って滑走路に似てますよね。

(ど真ん中にネットはありますが)


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

それでは、また次号をお楽しみに。

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